製本バイト

 サンボ現(下北サンデーズ劇団員)ほどではなかったが、学部生の頃はビンボーだった。

 食べていくためにいろいろバイトをした。以前書いたサイン会のサクラのような楽勝のバイトもあったが、中には本当につらいバイトもあった。


 つらいバイトの代表が製本のバイトであった。このバイトをどのように知ったのか忘れたが、埼玉のとある市にある製本工場でのバイトを初めてしたのは学部1年の夏だったか・・・。日曜日の朝早く、8時頃だったろうか、最寄り駅に出向き、バイト仲間と一緒に出迎えの車で工場に行く。8時頃からお昼の休憩1時間、午後の休憩30分ほどを挟んで、夕方5時頃まで、ひたすら働いた(働かされた)。

 製本したのは週刊の住宅情報誌。印刷工場から届いた束をほどき、印刷された紙を機械にセットアップする。これらの紙がベルトコンベアに乗って流れていき、最終的に週刊誌として完成する。これを積み上げて、出荷状態にする。これらの作業が工場で行われた。初心者は完成品を積み上げる作業、慣れてくると、完成品を束にして、機械でひもをかける作業、ちょっとしたベテランの域に達すると、紙を機械にセットアップする作業を任された。

 単純な作業だが、過酷な肉体作業でもあった。紙は重い。重い紙(最終的には雑誌)を朝から晩まで運んだり、持ち上げたり、積み上げていると、手も、腕も、腰も痛くなる。紙を機械にセットアップする作業は、それに比べれば大変ではないが、単純作業なだけにボーッとしてくる。ボーッとして、紙のセットアップが遅れると、機械が空回りして、止まる。止まるだけならいいが、怒られるし、他の作業者に迷惑をかける。

 工場内に冷房はないから、夏は汗とほこりまみれ。冬はストーブが焚かれていたが、広い工場が暖まるわけではない。体の芯から冷え、かじかんだ手で製本を積み重ねたり、ひもをかけたりする作業がつらかった。

 やるたびにこれを最後にしようと思っていたが、2ヶ月に1回くらいの割合で、結局10回近くやったように思う。理由は簡単。稼げたからだ。1日で、1万円を超える稼ぎがあった。デパート店員のバイトの時給が500円だった時代だから、金銭面からはおいしいバイトだった。それにその日にもらえたし・・・。

 2年目の夏など、1日で3万円ももらえたときもあった・・・。