discipline

 英語にdisciplineという単語がある。いくつかの意味があるが、研究者なら「学問(分野)」という意味が一番おなじみか。他に、「訓練、鍛錬」、「規律、しつけ」、「懲罰、折檻」といった意味がある。1つの単語に学問と懲罰、折檻の意味があるのは、disciplineがラテン語のdisciplinaに由来するからだ。このラテン語は「弟子を教えること」を意味する。弟子を意味する英語のdiscipleに関連する。

 親方は弟子を厳しく教え込む、それは厳しい訓練、鍛錬である。そこには規律があり、それを守らなければ懲罰を与えられる。大学院の指導教授と院生との関係も似たようなもので、学部門分野の発展においても徒弟社会の親方と弟子との厳しい関係があったことを容易に想起させる。

 語源的に考えれば、学問を志す学生に対して指導教授が厳しく指導するのは当たり前のことになる。自由な研究テーマを選ばせないのもあり得るのだろう。これが正しいか否かの議論を置くとして、文系の大学院においては、師匠と弟子的な関係が指導教授と院生との間に存在するところが多いと思われる。師匠の言うことを聞かないと懲罰を受けるのがdisciplineだとすれば、師匠との関係をうまく構築することが院生に求められるかもしれない。少なくとも大学院に進学する際には、指導教授との関係がどのようなものになるのか、指導教授の指導方法、場合によっては性格、人格について、事前にリサーチしておいた方がいいと思う。

 『リーダーズ英和辞典』によれば、disciplineという単語は「調教、責め」と言った意味でSMの世界でも用いられるようだ。SとかMとかといった性向だけでは、SMも成立しないのだろうか。ちなみに『ジーニアス英和大辞典』には、SMという語は出てこず、単に「むち打ち」という意味が与えられているだけである。翻訳家にはやはり『リーダーズ』の方が有用だろう。