人生の岐路

 学部時代の友人のことを書いたら、別の友人のことを思い出した。


 優秀な学生だった。よく勉強した。その甲斐あって、在京テレビ局と出身県の県庁職員の両方に受かった。

 本人はテレビ局勤務を希望したが、帰ってくることを強く望んだ親を説得できなかったために、県庁に勤めることにした。

 県庁に勤めて水産課に配属された彼は、ある島の出張所に配属され、漁師たちと毎夜酒を飲んで過ごしたという。毎夜酒を飲んだとしても、テレビ局に勤めていれば囲まれるのは綺麗な女の子たちだろう。「島流し」などと思って、選択を誤ったと後悔したこともあるかもしれない。

 なぜ親を説得できなかったか?彼が受かったテレビ局のネット局が地元になかったからだ。親はどんなテレビ局か、イメージできなかった。もしあのときネット局があれば、今頃彼は六本木で飲んでいたかもしれない。ただ、まじめな好青年だったから、県庁職員として活躍する姿のほうが彼には似合っていると思う・・・。