翻訳本

 われわれが学部生の頃、語学の授業は講読が中心。

 2年の第2外国語の授業。テキストは彼の国では作家のエッセイ。そもそも抽象的な話が中心で難解なテキスト。加えて、1年の時に文法をしっかり勉強していなかったから、よくわからない。試験はどうしよう・・・、と思っていたら、クラスメートが図書館から旧い翻訳を探してきた。友人たちの多くがそれに飛びつき、コピーを頼んだ。もちろん私もそのコピーを入手したひとりだった。

 試験は和訳だったから、翻訳を覚えればクリアできた。毎回の授業が逐語訳で、進度はゆっくりだったから、範囲は広くない。いい加減な試験だったと思うが、学生はもっといい加減だった。それでも、図書館の片隅の、もう何年も借り手がいなかったような本を探してきた学生がいることはすごいと思った。まあ、そのすごさを外国語の勉強そのものに向ければよかったとは思わないでもなかったが・・・。