五月病の女子学生(2)

 「あなたは誰ですか?」というメールを送ってきた女子学生に、どのような内容の返信をしたのか、正確に覚えていない。

 しかし、せっかく入った大学だ。このまま勉強していけば、きっと楽しくなるはずだ、といったことを書いたような気がする。


 私が書いたメールがどの程度効果を持ったかはわからない。しかし、彼女はちょっとずつ元気になって、大学をやめずに勉強を続けたのだった。どうしてそんなことがわかるのかと言えば、しばらく彼女とメールのやりとりをしていたからだ。いわばメル友だった。

 はじめてメールを送ってきてから2ヶ月ほどして、彼女は私が彼女の大学の非常勤講師であることを知った。彼女は驚いたが、1つの提案をしてきた。「『先生』でなくて、メールと同じように、『さん』で呼んでいいですか?」もちろん、問題はない。

 翌年度になって、彼女は私の授業も取った。他の学生が「先生」と呼ぶ中、彼女だけは、「さん」で呼んできた。その後も大学で会っては立ち話をしたり、ときどきメールをもらったりした。

 4年が経ち、彼女は大学を卒業していった。