紙の辞書の思い出

 先日、大学院の授業が終わったあと、1人の学生と雑談したときに、どの辞書を使っているか聞いてみたら、「電子辞書です」というわけのわからない返事が返ってきた。

 いや、その、電子辞書にどの辞書が入っているのか知りたかったのだが、「『ライトハウス英和辞典』がいいと言われたので、それを使っています」というこれもまたよくわからない答えが返ってきた。

 電子辞書に『ライトハウス』が入っているのかどうなのか、わからないやりとりだったが、『ライトハウス』とは懐かしい名前を聞いた。そう言えば『ライトハウス』は私も学部学生時代に使っていたのだった。

 大学院入試の英語の勉強は『リーダーズ英和辞典』と『ライトハウス』を併用して使っていた。単語は主に前者を、構文を取りたいときはもっぱら後者を引いた。机の上に2冊の辞書を置くのも大変だったが、いくつかの単語を同時に調べてしおりを入れたり(もっともこういうことはほとんどなかった)、鉛筆やペンを入れたり(これは多かった)、場合によっては指を挟んで閉じないようにしていた(実はこれが一番多かった)な。人差し指と中指と薬指を辞書に挟んでいたりすると、たいてい何かの拍子にどれか抜けてしまって、ページが閉じてしまい、また引き直すなんてことを何度もした。

 電子辞書ではそういうドジは発生しないし、確かに便利なのだが、紙の辞書のように、複数の辞書を同時に見たり、1つの辞書の複数のページを同時に見たりすることができないのは、当然と言えば当然だが、残念だ(複数の電子辞書を使えば解決するけれど)。ヒストリーで前に調べた単語を簡単に見ることもできるけれども、ボタンを押して出るまでの時間が何とももどかしい。指で挟んだ紙の辞書でのページ移動の方がはるかに早い。もっとも指が抜けていなければの話ではあるけれども・・・。