海外で家庭教師・・・(2)

 留学中に家庭教師をしていた中学生の一家は、父親が大企業に勤めていた。中学生の子供も含め、一家そろってビジネスクラスで赴任してきた話を貧乏留学生は複雑な思いで聞いたことを覚えている。

 さして暑くもならない土地で、4LDKの部屋すべてにエアコンを付けていた。もちろん1つ1つの部屋は日本よりもはるかに広い。母親は語学教室と地元の主婦が主催する趣味のサークルに通っていた。中学生の子供は地元のスポーツクラブに参加していた。日本では考えられない長さの夏休みを取って、あちらこちらにドライブに行く話を自慢気に話した。その一方で、「お金がないので、家庭教師のお礼はあまりお支払いできません」と言ってくるのだから、驚き、呆れた。もともと別の家で家庭教師を頼まれていて、その空き時間を使ってついでにこの家の中学生を教えることになったので、まあ黙って聞いていたのだが、「教育に対する投資は惜しんではいけません」ぐらいは言ってもよかったかとも思う。