指導教授の性格を知る(1)

 10年以上前の話。博士後期課程の後輩が、ある学会に入ろうとした。われわれの分野では推薦者2名を要求する学会が多い。当然のことながら、まずは指導教授に推薦者の1人になってもらおうと考え、書類をもって研究室のドアを叩いた。

 「学会に入りたいのですが・・・」
 「院生だと入会のメリットはないなあ。地方で開催されると行けないし・・・。」

 このような短い会話が交わされて、後輩はすごすごと引き返してきた。もちろん出てくるのは指導教授に対する愚痴である。

 普通の人は後輩に同情し、指導教授を非難するだろう。しかし、この後輩は指導教授とつきあって5年以上経つ。それだけつき合っていて、なお指導教授の性格をつかんでいない彼も悪い。

 「そうですが、東京で開催されるときには参加できます。学会に入ってさらに刺激を受けて勉強したいと思います。」と言えばいいのである。
 「まあ、そこまで言うのなら、仕方ないね・・・」と推薦者になったはずだ。

 学生の言うことをまず突き放す。それにもめげずに自分の意志、希望を言ってくる学生を指導教授は歓迎した(と私は解釈していた)。まあちょっとした天の邪鬼的なところが指導教授にはあったのだ。そんなことは研究室仲間では周知のことだ。したがって、ちょっと否定的なことを言われて戻ってきた後輩に問題がある、と私は後輩を説教したのだった。

 この後輩とは別の後輩(女性)と一緒にフランス語の勉強会を行っていた(6月26日の記事「前科・・・」参照)。彼女も学会に入りたいということだったので、彼女を連れて指導教授に推薦者になってもらえばよかったのである。世間によくあるように、指導教授は女性には甘かったからニコニコして署名、捺印したはずだ。この作戦をとらなかった点においても、私は彼を叱責したのだった。