赤ペン先生

 女子学生の英語の添削で思い出したが、昔、ある通信添削会社の赤ペン先生なるものをアルバイトでやったことがある。学部生の頃だ。他の会社は知らないが、この会社は生徒の答案をとにかく真っ赤にして返すことをモットーとしていた。添削しまくるのである。しかし、中にはひどい答案があって全くやる気のないものもある。他方で非常にいい答案があって満点に近いものもある。この会社の方針はどちらも真っ赤に添削するというものであった。

 仕事だからやっていたが、私はこの方針には賛成できなかった。やる気のない答案は「やり直し!」、できている答案は「よくできています」でいいような気がしたからだ。

 そのうちといってもなお学部生だったが、添削マニュアルを作る側に回った。この会社の添削のほとんどは、マニュアルを写すだけのものであった。そう意味では添削というよりも転写であった。生徒へのコメントはオリジナルであったが、それも20枚、30枚も添削していれば、どうしても同じような内容になってしまった。