ある先生の話(2)

 本来学部で縁が切れるはずであった先生であったが、大学院受験の時に関係することになった。
 大学院の修士課程は英語と専門科目2科目の試験があった。専門科目の1つは第1志望とする科目だが、もう1つをどうするかという問題があった。第1志望の先生に、先生の元で勉強したい、と相談に行ったら、「試験の成績で合否が決まるからとにかくいい成績を取ること」とのこと。さらに「大学院に進学することを第1とするならば、第2志望として入りやすい研究室を希望するべきである」と言う。
 考えた末、当初第2志望と考えていた研究室志望を変更し、あの1回しか出なかった先生の研究室を第2志望にすることにした。
 その先生を第2志望としたことは正解だった。というのも試験対策が楽だったからである。私が受けた大学院の場合、専門科目の試験は各研究室の指導教授がもっとも専門とする分野から出題される。したがって、各先生の過去の著作、論文をひたすら読む、ということにしたのだが、第2志望とした先生は過去30年ほどのキャリアで論文が10本もなく、翻訳本が1冊しかなかったからである。かくして、英語と第1志望の科目に集中して試験勉強を行うことができたのである。その先生は大学院受験においても楽勝科目であった。