原稿を書きながら報告・・・

 海外のある学会に出席したときのこと。

 その国でも著名な研究者の報告。その国では用意した原稿を読み上げるスタイルの報告が多いのだが、彼はその学会でもトップ10にはいるほどの忙しい研究者で、原稿をあらかじめ用意できなかったようだ。しかし、彼はそれでも原稿を読み上げながら報告をしていた!

 なんとその研究者は、壇上で報告原稿を書きながら、たった今書いた原稿を読み上げながら報告をしていたのだ。もちろん読み上げながら、さらに原稿を書き進めていたのだった。

 報告は30分ほどだったろうか。最初から最後まで、彼は書きながら書いた部分を読み上げ、読み上げながら原稿を書き、さらにそれを読み上げながら原稿を書く・・・、という作業を続けたのだった。

 報告が終わって、近くに座っていた院生たちが、「あいつはすごい」、「書きながら、報告していたぞ!」、「頭の構造はどうなっているんだ」と、語り合っていた。

 報告原稿を書きながら、報告するという行為自体は確かにすごいが、内容はつまらぬものだった。やはり報告原稿はあらかじめ用意しておくべきである。