師匠と年賀状

 師匠(大学院の指導教授)には年賀状を欠かさず出している。最初に出したのは修士の試験に合格したときで、まだ指導を受ける前だったが、返事をもらって驚いたことを覚えている。というのも、おそらく師匠は数百通は年賀状をもらっていると想像したからで、返事などもらえないものと思っていたからである。返事はペン先がやや太い万年筆で宛名書きされており、印刷された文面に手書きで一言添えてあった。決まった文句を書いているとは思ったが、それにしても宛名と一言をどれほどの時間をかけて書いているのか、敬服せざるを得ない。

 不肖の弟子は宛名は年賀状ソフトを使用してしまうが、師匠は今もペン先がやや太い万年筆の手書きである。今年もまた何時間もかけて1枚1枚丁寧に宛名書きし、一言添えるのだろう。インクも変わらずブルーブラックなのだろう。