中の中の学生と挨拶

 中の中のうちの学生は教員との関係の取り方が下手である。例えば挨拶ができない。
 大人数の教室であっても、毎回授業で前に座っている学生の顔は、こちらにとっておなじみである。中には過年度に他の科目で教えた学生もいる。質問に来る学生もいる。そういった学生の顔はこちらも覚えてしまう。ところが、キャンパス内や大学の近くで彼らとすれ違う機会があっても挨拶、会釈はない。

 気づいていないわけではない。彼らもこちらの存在がわかっている。顔を動かさず、しかし、目はしっかり動かして、こちらを確認している。妙に顔をこわばらせている。しかし、ほとんどの場合、結局は挨拶、会釈がないまますれ違っていく。

 彼らの多くは挨拶をしたいと思っているのだろう。そうでなければ、視線を動かしたり、顔をこわばらせたりはしないだろう。しかし、高校までずっと抱いてきた教員からの疎外感、教員に対する不信感が、最終的に挨拶することを阻止しているような気がする。

 挨拶などどうでもいいように思われるかもしれない。ただ学生が思っている以上に、教員は学生の顔を覚えているものだということ、そして、顔を覚えている学生とは教室の外でもコミュニケーション(最も簡単な直接的コミュニケーションが会釈だろう)を取りたいと思っていることは知ってもらいたい。