「ある日突然」

 トワ・エ・モワが「ある日突然」でデビューしたのは1969年。小学生だった。そのころは、まさかある日突然、そんなことが起こるとは思ってもいなかった。

 4年前の2月、1年間の在外研究に出るちょっと前、研究室で書類をつくっていた。PCに2時間ほど向かって、普通に作業をしていた。いつもの通り、いつものような、ありふれた作業であった。

 さて、ちょっと、トイレへ行こう、そう思ったときのことだ。


 立てない・・・・

 立てない・・・なぜか立てない・・・とにかく立てない・・・
 腰が伸ばせない・・・腰が固まってしまった・・・

 無理に伸ばそうとすると、激痛が走る・・・

 肘掛けを腕で押さえつけて、必死に体を持ち上げて、腰の負担を軽くして、痛みを我慢して立ち上がる・・・、立ち上がろう・・・、立ち上がりたい・・・、立ち上がらせてくれ・・・、立ち上がらせてください・・・

 歯を食いしばって、激痛をこらえて、何とか立つ。しかし、腰をまっすぐ伸ばせない。というか、下手をすると、そのまましゃがんでしまう。腰に強力なバネが入っていて、伸ばそうとしても、まっすぐにしようとしても、強いバネで元に戻されてしまう感じだ。

 頑張って腰を伸ばす、がどうやっても逆くの字にしかならない。「>」な感じだ。とにかく、頑張って、そのままの姿勢で、トイレへとりあえず行く。誰にも見られなくてよかった・・・。

 1ヶ月後には海外である。こんな腰で大丈夫か?そもそも行けるのか?いや、一体全体何が起こったのか?

 とにかく医者へ行こう。何とか大学を出て、電車に乗る。途中下車して、タクシーに乗って救急センターのある病院へ行った。なぜ最初からタクシーに乗らなかったのだろう?よく覚えていないが、タクシーの座席に乗ると、腰が固まって降りられなくなるのを心配したのかもしれない。確かにタクシーに乗り降りするとき、とくに降りるときに苦労したのを覚えている。

 ともかく急患として診察してもらう。X線を取られ、湿布してもらう。後日、専門医の診断を受けることになり、帰宅した。今度は最初からタクシーに乗った。